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Denngonnbann 2017 vol155
わが国は「水」を安心して口に含むことのできる貴重な国として知られています。
蛇口をひねって直接飲むことのできるのは、世界中で15か国ほどといわれていますが、日常生活を送る上においては、特段意識することはないですよね。「安全」であることが、当たり前として生活できていることが、いかに奇跡的なことかと思い知らされるのが、災害に見舞われた時ではないでしょうか。水は出て当たり前、流せるのは当然のこと、そんな生活も、ひとたび災害がおこれば、瞬く間に取り消されてしまいます。そんなときの為に、とは言っても、備えには限界もあります。
保持期間を確認しながら、限られたスペースに、どのくらいの備えができるのか・・・
貴重な「水」との正しい付き合い方が、問われているようです。
6年に一度の更新時期を迎えた「貯水槽清掃作業監督者」
10月に、2日間の講習を受けてきました。
更新のたびに、法律だけでなくあらゆる問題点も時代とともに、少しずつ変化していることを感じています。
マンションなどの共同住宅に多く採用されている「貯水槽(受水槽)」。
この「水をためる=貯水」というシステムを廃止して「水道直結方式」を推奨してきたのが、平成元年頃から。
水道本管から直接、美味しく安全な「水」を。ということで。
共同住宅でも、条件によっては、直圧(水道本管の圧力のみで)で給水できることから飛躍的にその数を伸ばしてきました。
(ただし、諸所の確認が必要です)
既存で貯水槽(受水槽や高置水槽)を介しての給水方式から、水道直結給水に変更する場合、調査の上適切な工事を必要とします。
現状の本管からの水圧、必要な給水管の太さ(基準に達しているかどうか)に加えて、既存の給水管が老朽化による劣化が及んでいないか(状況によっては、配管工事が必要です)
あらゆる条件を満たした上で、圧力を加えるための「増圧設備(ポンプ)」を使い(必要に応じて)、直結増圧給水に変更することができます。
(タンクを介さず、水道本管の圧力にプラスして給水する)
このことで、今まであった「受水槽タンク」や「高置水槽タンク」「給水ポンプ」を撤去することができるわけです。
貯水槽設備を撤去した後のスペース有効利用、たとえば駐車場や、駐輪場などに利用されることもあります。
給水ポンプの管理、特に「水槽内の清掃」など、定期的なメンテナンスを必要としていた煩わしさがなくなり、水道本管から、新鮮で安全な水が確保できる。
水をためていることでの「汚染」の心配がなくなることなどがメリットと言われています。
反対に、「直結給水式」や「直結増圧式」にした場合、新鮮で安全な水の確保ができる反面、水道本管にトラブルがおこったとき(震災や、給水管本管の老朽化によるトラブル)や、増圧設備の不具合、停電がおこれば、たちまち断水となります。
増圧給水ポンプの採用があれば、こちらも定期点検が必要です。
給水方式の変更には、工事前後の費用対効果を考える必要があると思われます。
そんな中、東日本大震災を機に「水をためる」ことの重要性が見直されているそうです。せっかくある「貯水」の設備を、やめてしまうよりは、定期的なメンテナンスをしながら、もしもの時に備えておく。そんな考え方も一方では、見直されてきているのです。
直結給水推進活動が活発化したことで、全国で平成27年度105万基の貯水槽が撤去されました。
東京では、年間3000〜3500基の貯水槽が撤去されているそうです。
「貯水槽の水は汚い」とか「メンテナンスが大変」「土地の有効活用」という声が高まり、バタバタと直結給水あるいは、増圧給水ポンプ方式に変更する建物が目に見えて多くなりました。
そんな大きな波の裏で、マンションオーナー様からは・・・
「タンクやポンプを撤去したが、開いた空間の有効活用ができず、意味がなかった」
「配管工事が必要となり、莫大な費用がかかった」
「増圧給水ポンプを導入し、メンテナンス費用が以前よりもかかるようになった」
「震災を経験して、再度貯水槽を設けることを考えている」
など、多くの声があります。
給水方式の変更は、大きな決断が求められる内容です。
参考となる事例は、たくさんあるでしょう。ただ、お決めいただくのは、オーナー様や、管理組合のみなさまです。すべてが、所有者の方々にゆだねられています。長い目で、客観的な意見を取り入れつつメリットとデメリットを冷静に見つめて、時間をかけて判断されることをお勧めしています。
最近の若い人は・・・なんて言葉が思い浮かぶようになると、年齢を感じる?って人も多いはず。
先日、こんな内容のお話を小耳にはさんだので、ちょっとご紹介します。
前記でご紹介している「貯水槽」
そんな「貯水槽」の清掃業務などを行っている会社様での一コマです。
ある日、新人さんに、貯水槽清掃の準備で、ご入居者の皆さんに断水のお知らせをするよう命じられたそうです。新人さんは、困った表情で上司に相談したそうです。
「断水ってなんですか?」
そう、この新人さんは、断水はおろか、停電も経験したことがなく、断水という言葉すら聞いたことがなかったというのです。驚きとともに、年齢と時代の壁を感じたそうです。
今に至った話ではありませんが、同様の経験をされた方も多いはずです。
現在の世は、なんと恵まれた環境にいるのだろうと感心する一方、ライフラインが経たれたとき、当たり前が、そうではなくなったとき、便利の裏側に隠れている脆弱さを感じます。
政治も、経済も、天候も、今や誰もが予想もしなかったことが起こる時代です。
昔がすべて良かった、とも思えませんが、継続もまた難しいのが現代です。
大きな変化も、出来事も、将来的には必要不可欠なことだったと、前向きに思える、そんな時の流れに沿っていきたいものです。
大切なものって、いつの世も普遍的に、変わることのないものだから。